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もの凄い勢いで流れて行く景色の中に、八百屋の息子の顔もあった。 驚いたような表情を浮かべる顔はは、とても青褪めていた。<br> それも仕方がない。 自分が待っていた人物が、近衛騎士団団長の馬で連れ去られているのだから。<br>「エリシュカさんっ!」<br> 叫びながら追い縋ってきてくれるが、こちらは馬に乗っているのだ。 追いつく訳がない。<br> 息子をちらりと視界に捉えたが、カイルは無視してそのまま走り去った。<br> 王都民たちは暴走する馬を恐れて避けて道を開ける。 こんなことをしてはならないと頭の中では強く思うのだが、身体がいうことを聞かなかった。<br> 寮へ戻ったカイルは、急ブレーキをかけて大声を発した。<br>「開門っ!」<br> カイルが今日帰ってくるとさえ思っていなかったのだろう。 慌てて表門の警護番である騎士たちが、見張り小屋から出てくる。<br>「お、お帰りなさいませっ!」<br> 開くどうかというところで、馬頭を割り込ませるように進んだ。 こんな強引なカイルを見たこともない彼らは、驚きを隠せないようだった。<br> 門も開きっぱなしでカイルの動向を呆然と見ていた。<br>「はい、ちょっくらごめんよ~」<br> 息を切らしながらザグーも門を潜る。<br>「ザグー様、お疲れ様です。 何かありましたか?」<br>「悪いけど応えている暇はない。 また後でね」<br> 焦っているザグーはいつもの間延びではない言い方が出来るのだと、騎士たちはこんな時なのに思った。<br>「団長、落ち着いて下さい」<br> すでに愛馬を降りているカイルは、馬上に残された梓紗を睨みつけるように見ていた。<br>「失礼ですが、この方は何方なのです?」<br>「アズサ殿、降りて下さい」<br>「え・・・っ? アズサ様?」<br> 今度はザグーの方が驚いて梓紗を見上げる。<br> 馬にも乗ったこともない梓紗だ。 もちろん一人で降りられる訳もない。 だが今はそんなこと言ってられない。 梓紗は勇気を出して跨っていた足を揃え、降りようとしたらカイルがウエストを掴んで補助してくれた。<br> 対峙したカイルは、今まで見たこともないような厳しい顔をしている。 でもこんな時にでも優しさを見せる彼に、梓紗はどう接していいのか解らなかった。<br>「え・・・・・・? 本当にアズサ様?」<br> 驚いたような声を発するザグーの目の前で、カイルはまたも梓紗の腕を掴んだ。<br> 思ったより強い力で掴まれて、梓紗は顔を顰める。<br> それに気付いたザグーが、カイルの腕に手をかけた。<br>「団長、落ち着いて下さい。 アズサ様が痛がっています」<br> ハッと動揺するように梓紗を見たカイルは、腕の力を緩めてくれた。<br>「ついてきて下さい」<br> 手を離したカイルは先導するように前を歩き出した。<br> 身体が硬直して上手く歩けない梓紗の腕に、ザグーは優しく促すように触れた。<br>「アズサ様」<br> 梓紗は今にも泣きそうな顔でザグーを見上げる。<br> その顔に慰めの言葉をかけてやりたいが、今は無理だと判断する。<br> ザグーの視線の先には立ち止まって厳しい瞳をこちらに向けているカイルがいた。<br> 嫉妬に燃えるようなその瞳に、ザグーの背筋が凍った。<br> ザグーの視線に気付いたカイルは熱くなった息を吐き出し、こちらに戻ってきた。<br> カイルの足元が視界に入った梓紗は脅えたように身体を竦ませる。<br> スッと屈んだカイルは梓紗の両足を掬った。<br> いつものお姫様抱っこなのに、梓紗の身体は堅いままだ。<br> 寮へ入ってサフィナが待ち構えていた。<br> 外のただならぬ気配に玄関先まできていたようだった。<br>「お戻りですか」<br>「ああ、すまないがサフィナ様も同行願えるか?」<br> サフィナは何かを察したのか、無言で頷いた。<br> 腕の中の人物が誰かということを、サフィナは気付いているようだった。 その辺の事情もカイルは聞かねばならない。<br> 一階の奥の応接室へ通されて、梓紗はソファへそっと降ろされた。<br>「何故外へなど出たのです? これが初めてではないのでしょう?」<br> 向かいに座ったカイルに梓紗は勇気を出して視線を合わせた。<br>「外に出た? ・・・アズサさん、貴女外へ出てしまったの?」<br> 少し黙っていて欲しいという思いを込めて、カイルはサフィナを見据えた。<br> ザグーはカイルの背後に控えるように立っている。<br> そこへ額に汗を滲ませたビュールがようやく追いついた。<br> 素早く状況を察したビュールは、どうやら口を挟まない気でいるらしい。 無言で彼もカイルの背後に控えた。<br> 梓紗は鬘を外し、目の前のテーブルに置いた。 束ねていた黒髪も同時に降ろす。<br> ポケットから小さなケースを取り出して緑色のコンタクトレンズも外した。<br> それを見ていたビュールとザグーは驚愕したように口をあんぐりと開けて呆けたように見ていた。<br> 金髪の美少女の正体は梓紗だったのだ。<br> まさか瞳の色をも変えるものがあったとは思わなかった二人は、驚き過ぎて声も出なかった。<br>「その瞳の色を変える道具は、貴女の世界のものですね?」<br>「はい、そうです」<br> ビュールは今の状態を見てエスカヤ王国の第三王子の話は後に回した方がいいと判断し、口を閉ざした。<br>「何故、外になど出た? 今、王都中が祭りで観光客と他国民で溢れていることは貴女もご存じだろう? それがどんなに危険なことかも貴女は承知しているはずだ。 それなのに・・・何故?」<br> 悔しそうな、そしてどこか悲しそうな。 そんな顔をされたら、何処から説明していいのか躊躇ってしまう。<br> でももうこうなってはすべて話さないといけないだろう。<br>「最初はただの好奇心でした。 姿を変えた私をサフィナさんに披露したら私だと解らなくて、これなら外へも行けると思いました」<br> 観念した梓紗は僅かに視線を下げて話し出した。<br>「日本のものがもしかしたら外の世界にあるかもしれないと思ったのが、計画を立てた始まりだったかもしれません。 この世界にきて皆さんには親切にしていただけて本当に感謝しております。 でも・・・誰も私が日本へ帰れる方法を捜そうとはしてくれなかった」<br> 梓紗の言葉を聞いて皆が息を呑んだ。<br> 梓紗は『渡り人』としてこの国にきてくれた。 当然元の世界へなど帰す訳にはいかない。 いや帰ることなんて出来ないと思い込んでいた。<br> それは自分たちの傲慢さだと、梓紗の悲しそうに歪められた表情を見て痛感させられた。<br> 訳の解らない未知なる力でこの世界へ梓紗の意思も関係なく連れてこられて、不安にならない訳がない。 だから彼女を丁寧に扱おう。 そう思ったのだ。<br> でもそれだけではいけなかったのだ。<br> 彼女を元の世界へ帰す。 そのことも考えなくてはならなかった。<br> だがカイルはそう考えただけで、身が震えるほどの恐怖を覚えた。<br>(アズサ殿が帰る? 元の世界へ? ニホンへ?)<br> 嫌だ。 そう思わずにはいられなかった。<br> 初めて本気で愛した人を離したくない。 そう思ってカイルは視線を逸らし、苦笑した。<br> これこそ自分の傲慢だというものだ、と。<br>「『渡り人』の情報は本当にこの国には少なくて、城の文献を見ても何も解らなかった。 調べるには他国の協力も必要だと思う。 でもクレマンテ様も私が帰るといえば、態度が変わってしてしまうかもしれない。 そう思うと怖くて何も言えませんでした」<br> ぽろりと流された涙を、誰も拭うことは出来なかった。<br> ここにいる皆がクレマンテの協力者なのだから。<br>「せめて懐か ...
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